会いたかった人

【ずっと会いたかった人】Vol.1 デザイナーの阿部好世さん(2)

2019.5.13

いつも見る人をワクワクさせるアクセサリーをデザインする阿部好世さん。阿部さんのモノ作りの原点はどこにあるのか、どんな工夫をしているのか、聞いてきました。

阿部さんと言えば、一世風靡した”コットンパール”ですね。
はい。同義語みたいでした(笑)。2008年にはじめて発表した展示会で、6連のネックレスを身につけたバイヤーさんたちから「わー、軽い!」と驚きの声があがったことは、今でも忘れられません。それからも「(つけても)疲れない」「女性を自由にしてくれた」「開放感がある」「ゴージャスなのにカジュアル」「旅行に連れて行きたい」・・・と、使ってくれるお客様からの言葉が励ましになりました。思えば、コットンパールという素材に出合ったのは、偶然で・・・。「阿部さん、そんなに古いものが好きなら、これデッドストックだけど」と見せてもらったのが、50年間倉庫に眠っていたコットンパール。ひと目惚れでした。聞けば、昔の日本でたくさん作られていたもので、それを使ってアクセサリーを作ったのがきっかけです。ふたたび日の目を見せたい。でも、作り方は失われていて、職人さんたちとともに、手探りで一から製作することになったのです。それが、私のものづくりの原点かもしれません。
プティローブノアーのコットンパールが一番きれい。
そう言われると、「私がしてきたことは、間違ってなかったと感じます」
アンティークジュエリーに惹かれていたのですね。
年に何回か、NYやパリに、コスチュームジュエリーを探しに行きます。美しい細工や光り輝くパーツを見て、私が思うのは「どうやってこの金具を止めたのだろう」「この光を出すカットはどんなふうにしたのだろう」という興味。美しさには、必ず理由があって、その理由を知りたい。どんな背景があって、どんな技術があって、どこの職人さんかどんな思いで・・・と、尽きない疑問に答えを出したくなる。今なら、どんな技術を使えば、この細工が可能なのだろうか。私たちが生きている「今という時代」をどうのせていけるのだろうか。これが、常に私のテーマなんです。・・・思えば、人との出会いがあって、ここまでこられたと思っています。NYでは、アンティークジュエリーのディーラーのニックに必ず会いに行きます。「これは」「この細工が」と話し出すととまらない。私もずっと聞いていて、飽きることがない。・・・もう70代かな。ニックとあと何回会えるだろうと思うと、その一回一回がすごく大事に思えるんです。
東京・恵比寿にあるショップには、オリジナルのアクセサリーや服とともに、
NYやパリで阿部さんが選んできたアンティークのコスチュームジュエリーも並ぶ。
作る職人さんがいて初めてできることばかりですね。
日本での職人さんたちも、同じ方向を見つめる同志です。商品は一緒に作ります。去年は「樹脂で軽いオニキスを作りたい」と思って、熟練の職人さんにお願いしたのですが、すごいと思ったのは、「かっちり真四角に作るのは簡単。でも、それではオモチャに見える」と言うんです。「本物のオニキスに見えるには、どこかひずみが必要」だと。そのために、あえて旧式で、手のかかる方法を選ぶわけです。パーツができたら、今度はどんな金具にするか、これなら溶接がいいとか、豊富な知識と経験のある職人さんの意見を聞きます。こうして、一緒に仕事をすることで化学反応が起きて、驚きのある、感動が戻ってくる。「こうきたか」「こんな方法があったのか」と。大変ですが、楽しい工程です。私は朝型人間で、4時、5時に起きることもよくあって、疑問が出たり、ひらめくことがあったりすると、すぐにでも職人さんに電話をしたくなる。まだ6時だから、あと30分待とうと思いつつ、早く話をしたくてたまらない。実はその話をしたら、「何時でも電話してください」と言ってくれるんです。「阿部さんの気持ちはわかる。実は、僕もそうだから」と(笑)。
この色をもう少し出すにはどうしたらいいのか。パーツをつなぐにはどの方法がいいのか。
顔を合わせて、もの作りをしていく。
アクセサリー作りをしていて、一番の喜びは何ですか?
実際に身につけてくれている人を街中で見かけると、うれしいですね。作った仲間と共有したくなります。その一番最初のお披露目が、展示会です。そこでバイヤーさんたちの反応を見るのも、楽しみです。職人さんたちにも展示会に来てもらって、バイヤーさんの反応を見てもらい、スタッフには工程で工夫したところを説明してもらっています。そうすると「輪」がつながるんです。気持ちでつながる輪、ですね。もちろんお客様も、その輪につながっています。私はいつも「商品だけじゃない、キラキラした気持ちを持って帰ってもらいたい」と言っているのですが、私たちが手間と時間をかけたストーリーが「キラキラ」につながると信じているんです。
2019年の春夏コレクションの展示会で。目の肥えたバイヤーさんたちの反応が気になる。
説明するスタッフも気持ちがこもってくる。

阿部好世(あべ・よしよ)「プティローブノアー」デザイナー

新潟生まれ。高校卒業と同時にアメリカへ留学、NYでファッションを学ぶ。蚤の市で出合ったコスチュームジュエリーに魅せられ、帰国後2005年にオンラインショップを立ち上げる。2007年に直営店「petite robe noire」を東京・恵比寿にオープン。2年後には「古いものと新しいものをつなぐ」という考えのもと、日本の職人とともにコスチュームジュエリーのコレクションを発表、進化を続ける。その後、「YOSHIYO」ブランドでジュエリーラインも発足、2015年にはウェアコレクションもスタートした。

撮影・前田和尚 構成/文・越川典子