会いたかった人

【ずっと会いたかった人】インテリアスタイリストの石井佳苗さん(1)

2019.8.22

イタリアはジェルバゾーニ社のソファ<ゴースト>に座り、愛猫を抱いているその人は、インテリアスタイリストの石井佳苗さん。家電メーカーなどのTVCFでそのコーディネートを見ない日はないというほどのトップスタイリストだ。ウェブマガジン『Love Customizer 』を主宰、自宅のフルDIYをルポしたことで、一大ブームを巻き起こした。憧れの石井さんの新居に伺って、どうカスタマイズすればセンスのよい部屋ができるのか、ヒントを教えてもらった。

事務所と自宅を兼ねた、新しいお住まいですね。仕事とプライベートの空間は、どう分けていますか。
去年、湘南から東京に戻り、自宅兼事務所を新たに構えました。コンパクトになったので、かっちり分けて考えずに、リビングに2つの機能をもたせています。大きな鏡を置いたフランスの古い長テーブルが私のデスクなのですが、気が向けばPCを抱えて窓辺の丸テーブルに移動する。どこにいても好きなものが目に入るし、どこにいても心地がいい。リラックスして仕事ができます。カスタマイズって、DIYやリノベーションだけじゃなくて、自分の大好きなものとどう暮らすかってことでもあるんです。たとえば、鏡。空間が広がり、明るくなるので私は鏡が大好きで、リビングだけじゃなく、廊下やキッチン、寝室とあちこちに掛けています。アート作品や世界のあちこちで集めたグッズも目に入るところにあると嬉しいし、落ち着きます。もちろんルールはありますが、まずは、自分の「好き」とか「心地よさ」とか「ときめき」とかを最優先していい。好きなもの、愛するもの全部ひっくるめて、その人の表現なのだと思います。
長テーブルはコンパクトな部屋を大きく見せる工夫の一つ。大きな鏡も部屋を大きく、明るくしてくれる。ときおり部屋を横切る愛猫の姿が目に入り、陽の光の移ろいも感じられる。自分の顔をじっくり見つめることも。
賃貸だと、どうしても好みのインテリアにできないという声がありますが。
一人暮らしから家族が増えたり、マンションから一軒家に移ったり、賃貸から分譲になったり、“変化”は人生につきものです。私自身も引っ越しばかりで、今の住まいは賃貸です。ここは、キッチンが独立して奥にありまして。本当は、オープンキッチンで、家族や友人の顔を見ながら料理をしたいのだけれど、叶いません。だから、大好きなお茶やコーヒーはリビングで淹れたくて、アンティークのテーブルでお茶コーナーを作りました。茶器やポット、シュガーやスパイスなど、基本的なものを配置。今日は、ハーニーアンドサンズの紅茶を淹れましょうか。ホットシナモンスパイス風味です。どうですか? デスクから数歩の距離ですが、違う空間に来たように感じませんか? たった一脚の椅子を置くだけでも空気は変わります。怖がらずに、試してみてくださいね。
仕まい込まない、使う、これが石井さん流。好きな道具は目に入るところに置きたい。棚に並べる場合は、ゆるやかなルールがある。大まかに高さは揃えるけれど、きっちり揃えない。ガラス、陶器、磁器、金属、木・・・素材もミックスされていたほうが空間にニュアンスが出る。
部屋のイメージが先か、ものが先か。おしゃれなインテリアにするコツを教えてください。
インテリアを考えるときには、その部屋の「主役」をつくること。「核」と言ってもいいかしら。うちのリビングの場合は、赤い一人用のソファをまず主役、と決めました。これは、勤めていたカッシーナをやめるとき、がんばった自分へのプレゼントとして買った、リートフェルトの<ユトレヒト>。赤がアクセントになるでしょう? 主役が決まったら、あとは全体がなじむように配置を考えていきます。コンパクトな部屋だから、ダイニングテーブルは円形にしよう。置くのは、緑が見える気持のよい窓辺にしよう。小物は、ガラスの棚に飾って見えるようにしよう。この壁には、絵を何枚かかける空間にしよう・・・と、構成を考えていきます。理想ですか? ヨーロッパの古い小説の挿絵にあるような、アンティークショップの女店主。好きなものに囲まれて、猫がいて、誰もが気ままで自由でいられる空間。だから、仕事も好きですが、実は私、家にいることが一番好きなんですよね。
手前の赤い椅子が、名作<ユトレヒト>。石井さんが座っているのが<ゴースト>。同じソファで揃える必要なんてないのよ、と言葉を使わずに教えてくれている。石井さんの後ろの本棚は、岡嶌要さんデザイン。デスク横に置き、仕事関係の資料などを収納している。
カスタマイズって、難しいことだと思っていました。
基本は、「好き」という感覚です。いろいろなものを見たり聞いたり読んだりしていく中で、自分の好みははっきりしてくると思います。簡単にできるカスタマイズといえば、模様替えです。春と秋の2回、ラグを敷き替え、クッションや仕切りにしているファブリックを取り替え、飾っているアートや道具を入れ替えます。あの椅子を買ったらこんなインテリアになるかなとか、この照明をつけたらオブジェがもっときれいに見えるかもしれないとか、妄想しつつ(笑)。難しく考えず、クッション一つ、置物一つ、徹底的に好きなものだけ置く、と貫いてみてくださいね。そういう私も、カスタマイズしていなかったものに最近気づいたんです。それは、美容です。シミができたら放っておかずにケアする、効果のあるものできちんとケアすればいくつになっても肌は変わる、好みの肌にカスタマイズできるのだと、ようやくわかってきました。最近のお気に入りは、ホワイトニング スポットクリーム。家中にある鏡をのぞき込んでは、気になるシミのところだけにつけています。
大好きなものたちが収められた日本製のアンティークの飾り棚。どこでも使えるように置かれた黒いチューブもなじんでいる。美白成分コウジ酸配合の、デルメッド ホワイトニング スポットクリーム。 https://www.dermed.jp/item/whitening/index.php

石井佳苗(いしい・かなえ)インテリアスタイリスト

インテリアの大手家具メーカー、カッシーナに勤務後、独立。インテリアスタイリストとして、またDIYの名手として、雑誌やウェブサイト、広告などで活躍。自宅をDIYでセルフリノベーションして大きな話題に、DIYブームを牽引した。その工程はすべて『Love Customizer 1,2』に収めた。他に『DAILY LIFE』『Heima』などの著書がある。主宰するウェブマガジン「Love customizer」http://www.kanaeishii-stylist.com/

撮影・黒川ひろみ ヘア&メイク・レイナ 構成/文・越川典子

プレゼント|石井佳苗さんセレクト「ウインドチャイム」

抽選で5名様に、風にゆれるたびに美しい音色を奏でる「ウインドチャイム」。写真は、「ルン」という種類で、音色は古代中国の調べ。脳がリラックスすることもわかっているとか。窓辺や玄関に吊るして、楽しみます。