美のプロファイラー・松本千登世のときめきの作法

ESSAY vol.9

エッセイ

【美のプロファイラー・松本千登世のときめきの作法】VOL.9 「柔らかい」を感じる。

2019.12.18

柔らかい人でありたい、という憧れ。

「ホット飲料を手にした人は、冷たい飲料を持つ人より、『あたたかい人』だと想像する割合が多かった」。米国のある大学で行われた、未知の人物の写真を示して性格を推理する実験でそんな結果が出たという新聞記事を読みました。柔らかい服を着ている人に、性格のみならず肌も柔らかそうと感じる自分は正しかったと確信。柔らかい=優しくて穏やかで、だから女っぽい。シャープなもの、ハードなものに惹かれがちな私が、最近になって「柔らかいものに包まれたい」と思うようになったのは、じつは女っぽさへの憧れからでした。

Pelleq(ペレック)のデザイナー・大野京子さんデザイン。久々の厚手、手編み。なのにほっこりしない。このフリンジも、今年の気分。

柔らかさが湛える「人の温もり」。

「考える」より前に「感じて」ひとめ惚れし、アランニットを手に入れました。聞けば、70代の女性がひと針ひと針、手編みしたものだとか。袖を通すと、ふわんと柔らかく包まれ、思わず笑顔になる……。物理的な柔らかさの向こうにその女性の温もりを感じて、できるだけ丁寧に着ようと心に誓いました。まるでスカーフのようなスカートも、纏(まと)うたびその気持ちが高まるもの。繊細ゆえの「美しい揺れ」を楽しむために、立ち居振る舞いに気を配らなくては。そう、柔らかさに包まれることで女性らしさが呼び覚まされるのです。

昔買ったBALMANのジャケットに合わせた、とろんとしたシルクのスカートは、MARINE SERRE。

クリームの柔らかさ=肌の柔らかさ。

日々の美容は、柔らかさで自分を包む絶好のチャンスなのだと思います。わかりやすいのは、クリーム。肌に触れた途端、体温に反応するようにとろんととろける。なじんでいくほどに、肌が芯から解(ほぐ)れて、弾力を増す。昨日より今日、今日より明日と、クリームの柔らかさが肌の柔らかさになっていく……。そしてもちろん、肌の柔らかさは、頭の柔らかさ、心の柔らかさ、表情の柔らかさにつながります。柔らかいものに触れている人は、柔らかい表情をしている……、冒頭の「仮説」は、やはり真実に違いないと思うのです。

クリーム大好き。デルメッド プレミアム クリームNO.1は、なじみ方も好き。
肌が柔らかくなると、表情の自由度が広がる。笑いやすくなる。
https://www.dermed.jp/item/no1/index.php

女性であることが楽しみになる

私は、メイクアップでも、柔らかいものに触れるよう心がけています。例えば、山羊毛を使って一本一本手作りされたフェイスブラシ。ベースメイクの仕上げにフェイスパウダーを纏うとき、肌に触れたか触れないかわからないほどの、柔らかい肌当たり……。もちろん、肌を傷つけないとか、きめ細かい仕上がりが叶うとか、美容上のメリットはたくさん。でも、もっと計り知れない「効果」があると思うのです。毎日のメイクが楽しくなり、ファッションが楽しくなり、女性であることを楽しみたくなる。それが、柔らかさで包む効果……。

熊野筆。SHAQUDAのフェイスブラシ。肌心地はうっとり。

松本 千登世

まつもと ちとせ

美容エディター。航空会社の客室乗務員、広告代理店、出版社をへてフリーに。多くの女性誌に連載をもつ。独自の審美眼を通して語られるエッセイに定評があり、絶大な人気がある。近著に『「ファンデーション」より「口紅」を先につけると誰でも美人になれる 「いい加減」美容のすすめ』(講談社刊)。著書に『結局、丁寧な暮らしが美人をつくる。』『もう一度 大人磨き』など多数。

文・松本千登世 撮影・目黒智子 構成・越川典子